小学生向けのロボット組み立て体験会を産業技術短期大学で実施しました。子どもたちにロボットを作り、動かす楽しさを体験してもらうイベントです。同大とロボメイツは共同で「ミニマル工場」という、生産ラインを机の上に展開するコンセプトでロボット教材を開発しており、そのデモンストレーションも目的として開催しました。
産業技術短期大学と開発中のロボット教材のデモイベント
「ロボット組み立て体験・キャンパス見学会」
2021年にロボット教育事業「ロボメイツ」を立ち上げ、小学生に産業用ロボットに親しみ興味を持ってもらうことを目的に、プログラミングや操作体験イベントを開催してきました。
2022年8月には、地元・尼崎市にある産業技術短期大学様(以下、産技短大)との産学連携が実現。同大機械工学科の二井見博文教授を中心に、共同でロボット教材やカリキュラムを開発しています。
そのロボット教材のデモンストレーションなどを目的に、8月25日に同大でイベント「ロボット組み立て体験・キャンパス見学会」を開催しました。二井見教授や学生さんの協力のもと、地元の小学生のほか、尼崎市立尼崎双星高等学校(以下、尼崎双星高校)の情報技術部の生徒も参加しました。
産業用ロボットオペレーター育成プロジェクト「ロボメイツ」
イベントの狙い①教材「ミニマル工場」の開発
教材の開発にあたっては、「将来、子どもたちがロボットを使いこなせるように」との思いがあります。小学校ではノートパソコンやタブレットが各自に配られており、「ロボット教材も1人に1台を準備したい」「小学生同士で協力し、ロボットをつなげて自動化する生産ラインを机の上で再現したい」と考えています。
現在、ものづくりを中心に、これまで人が行ってきた作業の機械化及び自動化が発展しており、将来は産業用ロボットと共に人々が働くことが一般的になると予想されます。
ロボメイツが産技短大の二井見教授と共同開発しているロボットは、こうした産業社会の変化を反映したもので「ミニマル工場」といいます。
ミニマルとは「最小限の」という意味で、ミニマル工場は複数のロボットを組み合わせて「小さな工場の生産ライン」を再現するコンセプトの教材です。
ロボメイツではこの教材開発により1人1台で動作プログラムを行い、グループで協力して一連の協調作業ができる環境の構築を目指しています。
ミニマル工場を取り入れた授業を市内小学校向けに展開することを目標に、現在はまずアームロボットの開発を中心に進めています。
今回のイベントは、子どもたちにロボット教材の組み立てや操作をしてもらって楽しさを味わう体験をしてほしい、また、開発中の教材の改良につなげられればという思いで開催しました。
イベントの狙い②地域との連携(産学官)
2021年度にロボメイツの活動で尼崎双星高校での授業を始め、2022年度は高校生が教える小学校でのロボット授業が実現しました。
このような同校と弊社の産学連携に加え、2022年度には産技短大と弊社の連携も開始。尼崎双星高校と産業技術大学の間では進学実績があります。今回は同大がキャンパス見学会も行い、学内を案内してくださいました。
また、高校・大学と弊社、自治体や各種団体など地域での「産学官」の連携をより深める機会になればと、尼崎市経済部や市教育委員会の方、企業や研究機関などを支援する一般財団法人近畿高エネルギー加工技術研究所(略称:AMPI<アンピ>)の方をお招きし、イベントの様子をご覧いただきました。
パーツの一つ一つから作ったオリジナルのロボット教材
教材のコンセプトは「ミニマル工場」
大量生産を行う工場では、ロボットは流れ作業による製品の組み立て工程「生産ライン」の一部として働きます。
効率のよい大量生産を実現するため、製品の組み立て工程では、ベルトコンベアやアームロボットなど複数の機械を使った流れ作業と、作業を繰り返し行う「自動化」が必要になります。
例えば「搬送用ロボットが材料を運んできて、アームロボットが組み立て加工をして、ベルトコンベアに載せて次の工程へ送り出す」といった作業です。
ロボメイツでは、生産現場に即した「ミニマル工場」というコンセプトのもとでロボット教材を開発しています。小型のアームロボットや搬送用ロボット、ベルトコンベヤーを組み立てて動かし、小学校の机の上に「小さな工場環境」を再現する教材が目標です。
今回のイベントでは、小型のアームロボットの組み立て作業に加え、複数の試作品のロボットを組み合わせた生産ラインを作って動かすことも試験的に行いました。
産業技術短期大学の「ものづくり技術」とロボットへの情熱
イベント用のロボット教材準備にあたっては、産技短大の二井見教授と、エアグラウンドにアルバイトとして来ている同大の学生・上村さんに、企画から設計、製作まですべてにご尽力いただきました。材料を用意し、機械で切り出し加工して、手作業でパーツを分け、一つ一つの袋詰めまで行い、オリジナル教材を準備してくださったのです。
ロボットに情熱を注ぐお二人へ大変感謝するとともに、私たちもその情熱に感化され、ロボット教育に一層力を入れようと気持ちを新たにしています。今後も連携した活動を加速させてまいります。
小学生も高校生も、大人もロボットに夢中
イベントの流れ
イベントは下記の流れで実施しました。
- 講師紹介、産業技術短期大学学長挨拶
- 産業用ロボット「パナソニック コネクトの溶接ロボット」の動画上映
- アームロボット教材紹介
- アームロボット組み立て実習
- 産業技術短期大学の学校見学
マニュアルなしの組み立てによる、意外な発見
参加者はマニュアルがない状態で、講師に教わりながら部品の写真と完成品を参考にアームロボットを組み立てました。
実はここに、意外な発見が。
二井見教授によると「部品の写真と1台の完成品を参考に、ねじの長さなどを自分で考えながら組み立てることは、何もない状態から試作する手順と同じ」。なので、今回の組み立ては偶然にも、「アイデアを形にする手順」を踏む形になったといいます。
マニュアルがないことで、単純なパーツの組み立て作業に終わらず、参加者それぞれが観察力、理解力、創造力を発揮して「アイデアを生み、手を動かして形にしていくプロセス」を経験することにつながったのです。
小学生も高校生も、そして弊社の大学生アルバイトやインターン生、大人のスタッフまでみんな夢中になって取り組み、次々と完成させました。
尼崎双星高校の情報技術部には、ロボットのコンテストで強豪・灘高を破って優勝するなど輝かしい実績があります。この日も、早々に組み立てを終えた部員が小学生へ自発的に教えてあげるなど、実力もさることながら、心優しい一面も見せてくれました。
複数のロボットを組み合わせた「ミニマル工場」体験
ロボットの組み立てを終えた後は、試作品の中サイズのアームロボットやベルトコンベヤーをつなげた「ミニマル工場」の操作体験です。ロボット組み立てには真剣なまなざしで挑戦していた子どもたちも、「小さな工場」を動かすと笑顔になり、目をキラキラさせながら稼働する様子を見つめていました。
また、キャンパス見学会、溶接ロボットが工場で実際に作業する動画の上映も行いました。
学生の感想
準備段階から当日の運営、小学生や高校生のフォローまでイベントの主要メンバーとして活躍してくれた、弊社アルバイトの産技短大生・上村さんの感想です。
「ロボットに触れる機会の少ない人にどう教えたらいいか考えるのが難しかった。高校生も小学生も、組み立てていくうち形が見えてきてテンションが上がる気持ちは自分と同じ。共感してもらえてうれしかった」と充実した様子でした。設計の変更が必要な部分の発見もあったといい、教材開発の参考になりました。
まとめ
小学生向けのロボット組み立て体験会を産業技術短期大学で開催しました。子どもたちに、ロボットを作って動かす楽しさを体験してもらうイベントです。同大とロボメイツが共同開発中の生産ラインをテーマにした「ミニマル工場」教材のデモンストレーションも目的として実施。小学生から高校生、大学生、大人まで夢中になって取り組み、高校生が小学生をサポートする姿も見られました。教材や教え方も含めて今後の参考として活かしていきます。