産業用ロボット人材育成事業「ロボメイツ」の一環として、尼崎双星高校の生徒が小学校に出向く形でロボット体験授業を実施。生徒たちは、先輩の活動をベースに自らも内容や伝え方を工夫して、小学6年生の「先生役」を務めました。1回目の授業では、ロボット動画上映や仲良くなるための交流会、アームロボットの模型を使った操作体験を行いました。
大学生→高校生→小中学生とつなぐ「リレー型体験学習」
年齢が近く話しやすいため、より楽しい雰囲気に
私たちには、産業用ロボット人材育成事業「ロボメイツ」を進める上で、「楽しい体験を通して、ロボットに興味を持ってほしい」という思いがあります。
そこで、大学生→高校生→小中学生と教えていく「リレー型体験学習」という形にしました。
初めに当社スタッフがロボット操作やプログラミング技術をインターンやアルバイトの大学生へ教え、次に大学生が高校生へ教え、高校生が小中学生へ教えるという流れです。
教わる側にとっては、大人より年齢の近い学生の方が緊張しないため、わからない時やうまくいかない場合にも質問をしやすいというメリットがあります。また、共通の話題や若者同士の言葉で交流できることもあり、楽しい雰囲気で進められます。
学習への理解を深め、人に伝えるトレーニング
人に教えるにはまず自分が正しく理解すること。そして年下の子に向けて、わかりやすい言葉や伝え方を工夫することが必要です。教える側にとって、「リレー型体験学習」は学習内容への理解を深め、人に伝えるトレーニングになります。
また、活動に参加した大学生からは、「高校生の発想が面白い」「感じ方が違う」など刺激を受けることが大いにあると聞きます。教える、教わる、双方にさまざまな学びがあります。
楽しいロボット体験を広める「インフルエンサー」
私たちはロボメイツの体験学習を通して大学生、高校生、小中学生みんながロボットに親しむことを目指しています。
「高校生のお兄さん、お姉さんに教えてもらってロボットの体験学習をしたよ」「みんなでわいわいロボットを組み立てたり、プログラミングで動かしたりして面白かったよ」という楽しい体験を、「インフルエンサー」のように家族や友人に伝えてもらえたら。ロボットの便利さや面白さ、さまざまな面を知ることで、将来の職業選択にもつながれば……。そんな思いで、学生たちと体験学習を楽しくする工夫を日々重ねています。
ロボット授業実現までの道のり
先輩の思いを引き継ぎ、1年越しの開催へ
尼崎双星高等学校(以下、尼崎双星高校)と前年(2021年)度に計画・準備を進めた小学生向けロボット体験イベントは、新型コロナウイルスの感染拡大状況が急激に変わり、残念ながら直前で中止に。それでも、企画や運営方法は形を変えて他校での体験学習に活かされ、小学校の授業の企画は次年度の2022年へ引き継がれました。
2022年度に授業へ臨んだ商業学科の26人は、先輩の思いを引き継いで、小学校での授業を楽しくするために自分たちもアイデアを出し合いました。
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2022年度は交流会や新たなロボット教材を導入
先輩たちが残した感想の中にもヒントがありました。高校生も小学生もお互い初対面なので、緊張を解くためにも「仲良くなる時間があるといい」。
2021年度の授業計画であった1日から、2022年度は日程が2日に増え、顔合わせの交流会の時間を作ることができました。
また、同じ尼崎市内にある産業技術短期大学(以下、産技短大)の二井見博文教授(当時・機械工学科、現・電気電子工学科)が、ロボメイツのために新たにアームロボット教材を開発。その教材を使うロボット操作や組み立ても授業内容へ盛り込むことになりました。
いよいよ授業1回目
①ロボット動画視聴
9月21日、尼崎市立上坂部小学校の6年生3クラス、92人を対象にロボット体験授業を行い、高校生26人は司会進行や子どもたちに教える係、カメラマンなどの役割をクラスごとに分担しました。
1回目の授業の目的は、顔合わせとロボットについて知ってもらうこと。まずは産業用ロボットの動画を小学生と一緒に視聴し、実際に工場でロボットがどのように働くかを見てもらいました。
②名札作りで交流
高校生は、小学生と授業をする上で話しやすくできるよう、交流を目的とした「名札作り」を実施。ロボットやプログラミングにつながる雑談をしながら作業するうち、小学生はゲームなど身近なプログラミングの話には特に興味を持ち、積極的に発言してくれました。
これで予想以上に小学生と高校生の仲を縮めることに成功したため、2回目のプログラミング授業では、1回目に担当したクラスを引き続き受け持つことになりました。
③アームロボット教材で操作体験
産技短大の二井見教授の開発によるアームロボット教材を使った操作体験も行いました。産業用ロボットを簡略化した形で、レバーを引いたり押したりするとアーム部分が連動して前後左右に動き、先端部分を開閉することでものをつかめます。クレーンゲーム感覚でロボットの構造や動かし方を学ぶことができる教材で、小学生たちはペアでブロックを運ぶミッションに楽しんで取り組みました。
慣れてくると自分たちでルールを作ってゲームをするなど自由な発想で自ら学び、さらに複数人で協力して動かし、チームワークも高めていきました。
まとめ
産業用ロボット人材育成事業「ロボメイツ」の一環で、尼崎双星高校の生徒が小学校に出向く形でロボット体験授業を実施しました。生徒たちは、先輩の活動をベースに自らも内容や伝え方を工夫して小学6年生の「先生役」を務め、1回目の授業では、ロボット動画上映やアームロボットの模型を使った操作体験を行いました。おしゃべりしながら作業をする交流の取り組みが功を奏し、小学生が積極的に話してくれて高校生と小学生の距離を縮めることができました。ロボメイツ班の次の授業レポートは「③高校生が先生役 小学校でロボット体験授業 後編」です。